「健康寿命を延ばす」には、
骨を健康に保つことが大切です!
私たちの骨は、古くなった骨を壊す骨吸収と新しく骨を作る骨形成とを同時に行ない毎日入れ替わっています。これを骨代謝と言います。
骨粗しょう症は、骨量(骨に含まれるカルシウムの量)が減少してしまうことで、骨に鬆(す)が入ったかのような状態となって、骨折しやすくなる病気です。発症の原因は様々ですが、主に女性の閉経(更年期世代によくみられる)によって減少するとされる女性ホルモン(エストロゲン)が起因となって発症することが多いことから、高齢女性の患者様の割合が高いと言われています。この骨粗鬆症は大きく2つのタイプ(原発性骨粗しょう症、続発性骨粗しょう症)に分類されます。
原発性骨粗しょう症 | 続発性骨粗しょう症 |
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原発性骨粗しょう症は、全患者の9割近くを占めると言われ、閉経がきっかけの閉経後骨粗しょう症の患者様や高齢者(65歳以上)にみられる老人性骨粗しょう症の患者様のほか、栄養バランスの偏りや遺伝的要因などで発症するタイプも含まれます。 | 続発性骨粗しょう症は、関節リウマチや糖尿病といった特定の病気やステロイドの長期使用が原因となって発症するタイプになります。 |
検査と症状
骨粗しょう症の検査について
女性は50歳を過ぎたら一度は骨粗しょう症の検査を受けてみましょう!
骨粗しょう症の検査には様々なものがありますが、当院では正確を期するため以下の3検査を採用しています。
①DEXA (デキサ)法 |
骨密度検査において最も信頼性の高い検査法です。 【診断方法】 【YAM値】
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②骨代謝マーカー | 私たちの体の中ではリモデリングという作業が常に行われています。 これは骨を作る骨芽細胞と、骨を壊すは破骨細胞の働きが関係しており、骨粗しょう症の方は破骨細胞の働きが強かったり、骨芽細胞の働きが弱いことが多くみられます。 骨代謝マーカー検査は血液中の破骨細胞と骨芽細胞の働きを調べることが可能であり、骨粗しょう症のタイプ診断や治療法の選択などに必要となる大切な検査です。 |
③腰椎レントゲン | 痛みもなくいつの間にか背中が丸くなっている場合、骨粗しょう症の可能性があります。 尻もちや転倒の既往がなく、またDEXA法や骨代謝マーカー検査で異常がみられない場合でも、レントゲン検査で明らかな圧迫骨折がある場合、骨粗しょう症となります。そのためDEXA法と骨代謝マーカーにレントゲン検査を組み合わせることで、より正確な骨粗しょう症の診断が可能となります。 |
全ての検査結果を説明後にお渡ししますので検査毎に治療効果を確認していただけます。
骨粗しょう症の主な症状
主な症状ですが、次第に骨量が低下していくと痛みが出るということはありません。つまり自覚症状がないままなので、病状は進行させやすく、何かのはずみで転倒した際に手を着いて手首を骨折、背骨が体の重みでつぶれるなどの症状が現れて、初めて気づいたという方もよく見受けられます。
なお、大腿骨(太ももの付け根)や腕の付け根も骨折しやすい部位ですが、高齢者が大腿骨を骨折すると寝たきりになることもあるので要注意です。
骨粗しょう症により折れやすい骨の部位
骨粗しょう症により骨折しやすい部位は、以下のイラスト図にある背骨(脊椎椎体)、脚の付け根(大腿骨近位部)、手首(橈骨:とうこつ)、腕の付け根(上腕骨)です。
背骨(脊椎椎体)の骨折
背骨が体の重みで押し潰れてしまう「圧迫骨折」が起こります。
背中や腰が曲がるなどの原因となり、圧迫骨折が生じている場合でも、単なる腰痛として見過ごされていることや骨折しているにもかかわらず痛みを感じない場合もあります。
背骨の圧迫骨折は、1ヶ所骨折すると周囲の骨にも負担がかかり連鎖的な骨折につながりやすいため、早期発見・早期治療が重要です。
脚の付け根(大腿骨近位部)の骨折
大腿骨近位部は、骨折すると歩行が困難になり要介護状態になるリスクが高くなる骨折部位です。
大腿骨近位部骨折の約85%は、転倒が直接の原因となっており骨粗しょう症の治療と併せ、転倒予防も重要です。
予防と治療
予防と治療には、食事療法、運動療法、日光浴、薬物療法などがあります。
骨粗しょう症は「骨の生活習慣病」とも呼ばれており、生活習慣の改善によって骨密度の減少を予防することもできます。
食事療法
骨粗しょう症に不足しがちな主な栄養素は骨の主成分であるタンパク質やカルシウム、骨の再生に必要なビタミンD・Kなどです。カルシウムは食品として1日700~800mg、ビタミンDは1日400~800IU、ビタミンKは1日250~300μgを摂ることが勧められています。ビタミンDは腸からカルシウムの吸収を助ける、ビタミンKはカルシウムの骨への取り込みを促します。
食事の際はこれらが含まれる食品を一緒に摂ることが望ましいです。またいつもの食事では糖分(お菓子やパンなど)、リンの多い加工食品、塩分、カフェイン、タバコ、アルコールのなるべく摂取は控えましょう。
カルシウム | 魚介類・海藻 | ししゃも、いわし丸干し、干しエビ、しらす、しじみ、ひじき、わかめ など |
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豆類 | 豆腐、納豆 など | |
乳製品 | 牛乳、スキムミルク、チーズ など | |
野菜 | 小松菜、チンゲン菜、いりごま など | |
たんぱく質 | 肉類(鳥肉、赤身肉)、魚類、卵、乳製品、大豆 など | |
ビタミンD | 魚介類 | しらす干し、いわし丸干し、すじこ、さんま、ぶり、鮭、うなぎ、煮干し、アンコウの肝 など |
きのこ | きくらげ、干ししいたけ など *野菜、豆、イモ類にはほとんど含まれない |
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ビタミンK | 野菜・豆 | 納豆、抹茶、パセリ、しそ、明日葉、モロヘイヤ、小松菜、ほうれん草、春菊、大根 など |
魚介類・海藻 | 乾燥わかめ、海苔、おかひじき など |
運動療法
運動を通じて骨や筋肉に負荷をかけると骨粗しょう症の予防に抱えません。しかし激しい運動ではなく1日30分程度のウォーキングやスクワット、片足立ちなどがお勧めです。運動によって姿勢を保持することは、転倒のリスクや胃腸障害を減らす面で有効です。
日光浴
日光浴も骨粗しょう症にとって重要です。ビタミンDは紫外線を浴びることで皮膚から作られます。厚着や室内作業ばかりだと皮膚からのビタミンDの産生が減少しがちです。特に冬場は日光を浴びる機会が減るため、ビタミンDを含む食品を積極的に摂取しましょう。
薬物療法
現在、骨粗しょう症治療に使用されている薬剤は、骨の吸収を抑える「骨吸収抑制剤」、骨の形成を助ける 「骨形成促進剤」、カルシウムの吸収や骨形成を促進するビタミン(D、K)剤などがあります。どの薬を選び、いつから薬物療法を始めるかは、患者様の年齢や状態を考慮した上で医師が判断します。
以下に骨粗しょう症で使用される薬剤をご紹介します。
薬効 | 薬剤 | 特徴 |
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骨吸収 抑制剤 ① |
ビスフォスフォネート製剤 | 骨吸収を抑制する薬剤です。骨粗しょう症の治療薬のなかでも有効性の高い薬です。ビスフォスフォネートは破骨細胞に作用し過剰な骨吸収を抑えるため、骨吸収が緩やかになり、結果的に骨形成が促進され骨密度の上昇が期待できます。 |
抗RANKL抗体製剤 | 骨吸収を抑制する薬剤です。破骨細胞の形成や機能を促進するRANKLという体内物質を阻害することで、破骨細胞を抑制し骨形成を促します。 | |
カルシトニン製剤 | 骨吸収を抑制し、強い鎮痛作用も認められています。骨粗しょう症によって生じた圧迫骨折の疼痛緩和に有効です。 | |
塩酸ラロキシシフェン(SERM) | エストロゲンに似た作用があり緩やかに骨密度を増加させますが、乳房や子宮などには影響を与えません。 骨質の改善作用や骨外作用としての乳癌リスクの低下、脂質代謝改善効果もあります。但し、更年期症状には無効です。 |
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カルシウム製剤 | 血中カルシウム濃度を上昇させ、副甲状腺ホルモン分泌を抑制します。 | |
骨形成 促進剤 ② |
副甲状腺ホルモン製剤 | 骨形成を促進する薬剤です。骨を作る骨芽細胞の成長を助けると同時に、その減少を抑えることで骨形成を強力に促します。 |
活性型ビタミンD3製剤 | 食事から摂取したカルシウムが腸管から吸収されるのを促進します。骨代謝のバランスを整える作用もあります。 | |
ビタミンK2製剤 | 作用は緩やかですが骨形成を促進作用と骨折予防効果が認められています。 | |
① + ② | 抗スクレロチン抗体製剤 | 骨吸収抑制と骨形成促進を同時に行う薬剤です。骨折リスクが特に高い方のみに使用します。 |