~ 子供の踵痛!それはシーバー病(Sever’s Disease)かも!?~
シーバー病は小児の踵痛の一般的な疾患です。
発生率は1000人あたり3.7人とやや高めであることが報告されています。
サッカー、フットボール、バスケットボールなどのジャンプなどが多い高強度のスポーツに多く発生します。
腫脹や熱感などはあまりなく、運動後の疼痛と踵骨の圧痛所見が主に出現します。
シーバー病はヒールカップの使用による疼痛の軽減効果が非常に高いです。
リハビリでは運動制限を行いつつ、ヒールカップの使用や下腿三頭筋に対するリラクゼーションを行います。
ここがポイント!シーバー病のまとめ
- シーバー病は小児の踵痛を引き起こす代表的な疾患
- 7~9歳の女子と8〜15歳の男子に多い
- 基本的な診断は単純X線と臨床所見で行う
- ヒールカップの使用が疼痛の軽減に効果的
- 疼痛が強い時期は運動制限を行うことが大切
目次
- シーバー病とは
- シーバー病の鑑別
- シーバー病の診断
- シーバー病の治療
- リハビリの流れ
1.シーバー病とは
シーバー病(Sever’s Disease)は踵骨の骨端症として知られており、成長期に多い骨疾患の1つです。

骨端線は14歳まで閉鎖しないと言われているため、その頃までは発症する可能性があります。
踵骨骨端部にかかる反復的な圧縮ストレス剪断力による過負荷が原因で起こると考えられています。
この疾患は1912年にJames Warren Severによって初めて記述されたと言われています。
そのことから日本でもシーバー病と呼ばれています。
シーバー病は小児の踵の痛みの最も一般的な原因であると言われており、発生率は患者1000人あたり3.7人と報告されており、やや高めであることがわかります。
(日本人で多い大腸がんは10万人あたり数十〜百数十人、シーバー病は10万人あたり370人)
スポーツクリニックの診察の2~16%を占めていて、小児の反復性ストレス障害の5.8~22.7%を占めていると言われています。
好発年齢は7~9歳の女子と8〜15歳の男子で、サッカー、フットボール、バスケットボールなどの高強度のスポーツ競技で好発します。
リスク因子としては
- 急速な成長期
- 下腿三頭筋のタイトネス
- 扁平足、凹足
- サポート力の低い靴の使用
などが挙げられています。
通常は特定の外傷歴がなく、踵骨の接地部・内外側・後方を圧迫した際に圧痛が認められるという特徴があります。
運動中ならびに運動後に疼痛を訴えることが多く、踵骨への荷重を避けるために足を引きずるように歩いたり、つま先立ちのような姿勢で歩く姿が観察されます。
2.シーバー病の鑑別
シーバー病はX線および、臨床所見にて基本的に診断は可能ですが、鑑別診断も非常に重要です。
MRI やCTでは、反復ストレスによる微小骨折からの骨髄浮腫や、軟部組織の炎症状態を診断することができます。
鑑別診断には主に以下の疾患が挙げられます。
- アキレス腱炎
- 足底腱膜炎
- 踵骨疲労骨折
- 骨嚢胞による亀裂骨折
- 踵骨後滑液包炎
- 足関節後方インピンジメント
稀に足根骨癒合症、若年性特発性関節炎、感染性骨髄炎、踵骨腫瘍などが挙げられるため、診断には画像検査での確認が必要となります。
3.シーバー病の診断
シーバー病の診断は基本的には単純X線で行われます。
踵骨の骨端核の不正像や分節化、骨硬化像などがみられた場合はシーバー病と診断されます。
臨床的には、発赤や熱感などは特に見られず、シーバー病に対する検査を行います。
①片脚踵立ちテスト
裸足で片脚の状態で踵立ちを行い、疼痛の有無を確認します。
②スクイーズテスト
踵の内側および外側を圧迫し、疼痛を確認します。

③触診テスト
踵骨の遠位縁の触診を行い、疼痛を確認します。
・・・
それぞれ、感度100%、97%、80%で、特異度は全て100%と非常に有用な臨床検査であると言えます。
このように単純X線で鑑別、踵骨骨端核の所見を確認し、臨床検査でも所見が得られればシーバー病だと診断することができます。
4.シーバー病の治療
シーバー病は基本的には保存療法で治療をします。
内服治療や運動制限およびストレッチや筋力トレーニング、テーピング、インソールやヒールカップなどの有効性が示唆されています。
痛みが強い場合、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を主に使用します。
活動制限に関しては、疼痛が出現するような動作や強度の運動を一時的に休止します。
シーバー病は運動後の疼痛が強く出現しやすい疾患になるので、夢中で運動を行っていると運動中は痛みを感じないことがあるため、運動量のコントロールが難しい場合は、運動の休止をオススメします。
テーピングではシーバー病が足部の過度な回内、足の内側アーチの低下とも関連があると言われているため、アーチをサポートするようなテーピングを巻きます。
ヒールカップは踵骨へ当てるクッションです。
クッションを追加することで、踵骨にかかる衝撃を吸収することができ、疼痛の緩和に繋がります。
実際に約4週間のヒールカップの使用後、患者の疼痛がほぼ0に近づいたことが報告されています。
5.リハビリの流れ
疼痛がある間は運動量や強度をコントロールする必要があります。
リハビリでは下腿三頭筋のストレッチを行い、踵骨にかかる牽引力の軽減を図ります。
しかし、疼痛出現初期においてはストレッチの姿勢で疼痛を訴えることがあります。
その場合は下腿三頭筋のリラクゼーションを中心に進めます。
テニスボールやフォームローラー、ストレッチポールなどを使用して、下腿三頭筋を直接マッサージするようにします。

またシーバー病は足の過度な回内や足部の内側アーチの低下とも関連があると言われているため、足部内在筋のトレーニングを行います。
足部内在筋トレーニングはショートフットエクササイズが文献上も一定の効果が示されていますが、小児患者にこれを真面目に行ってもらうことは難しいのが現状です。
そのため、お手玉などの道具を使いそれを掴んでもらうような動作を行うことで、足部内在筋の活性化を図っていきます。

シーバー病においては踵骨への牽引ストレス並びに圧迫ストレスを軽減させることが重要です。
参考文献
- Conservative Treatment of Sever’s Disease: A Systematic Review
- Conservative Management of Sever’s Disease(Calcaneal Apophysitis): A Comprehensive Review of Treatment Efficacy
- Sever’s injury: a clinical diagnosis
- Sever’s Disease (Calcaneal Apophysitis)