
~ 膝の引っ掛かりや痛みの原因は半月板かも!?~
半月板損傷はスポーツ場面で発生することが多く、急激なストップ動作やカッティング動作で、膝の内反や外反、回旋のストレスがかかることで発生します。
半月板のどの部位が損傷するかによって状態は変わるものの、疼痛やクリックやロッキングなどの様々な症状が出現します。
近年は半月板を温存することが主流となっていて、治癒の可能性がある場所であれば半月板の治癒過程を考慮したリハビリが重要です。
今回は半月板の損傷形態から診断、リハビリのポイントまで解説をしていきます。
ここがポイント!半月板損傷のまとめ
- 内側と外側の半月板で形状と動きが異なる
- 半月板には治癒する場所と治癒しない場所がある
- 半月板損傷ではクリックやロッキングなどの様々な症状が出現する
- 診断はMRIで行うことがほとんどである
- リハビリでは半月板の治癒の有無を考慮して進める必要がある
目次
- 半月板損傷とは
- 半月板損傷の病態と損傷形態
- 半月板損傷の診断
- 半月板損傷の治療
- リハビリの流れ
1.半月板損傷とは
半月板とは線維軟骨組織で、靭帯や軟骨とともに膝関節の機能において重要な組織です。

半月板は、コラーゲン線維とエラスチン線維、半月板細胞、水分などで構成されています。
コラーゲン線維の中でも辺縁はⅠ型コラーゲン線維がほとんどを占めますが、中央ではⅡ型コラーゲン線維が60%程度を占めています。
これは中央部分では圧迫、剪断ストレスが加わりやすく、辺縁では伸長ストレスが加わりやすいことを反映しているからです。
内側と外側にそれぞれ半月板が存在していて、内側はC字型、外側はO字型していて前額面から見ると外縁が厚く凸状で、内縁が薄く凹状をしています。
外側半月板には半月大腿靱帯が付着していて、内側半月板は内側側副靭帯の深層に付着しています。
また外側半月板の後角には膝窩筋腱が、内側半月板の後角には半膜様筋腱が付着し、半月板の動きをコントロールしてくれているのです。
膝関節は大腿骨と脛骨からなる脛骨大腿関節と、大腿骨と膝蓋骨からなる膝蓋大腿関節によって構成されています。
その関節の間に存在していて、荷重伝達、衝撃吸収、関節安定化、関節軟骨の潤滑と栄養という役割があります。
半月板は全ての領域に血管や神経が分布している訳ではなく、辺縁領域がred-red zoneと呼ばれ、中央領域がwhite-red zone、中心領域がwhite-white zoneと呼ばれていて、辺縁は血管、神経伴に豊富で、中心領域は血行が存在していない無血行領野です。
そのため、半月板損傷の部位によって治癒が望めるかどうかが変わってきます。
半月板損傷は外傷か変性断裂かの大きく2つに分けられます。
外傷はスポーツ選手に多く発生し、変性断裂は中高齢者に多く発生すると言われていますが、変性断裂でも急性に増悪するケースもあるそうです。
損傷メカニズムは明らかになっていないものの膝の内外反と回旋のストレスが組み合わさることで生じるのではないかと言われています。
症状としては疼痛、ロッキング、キャッチング、クリック、腫脹、giving way、可動域制限があります。
2.半月板損傷の病態と損傷形態
半月板損傷はISAKOS(International Society of Arthroscopy, Knee Surgery and Orthopaedic Sports Medicine)の分類によると
- 損傷の深さ
- 辺縁の位置
- 前後の位置
- 膝窩筋裂孔、中央の損傷
- 損傷パターン
- 半月板損傷の質
- 損傷の深さ
の7つのカテゴリーによって分類されています。
損傷形態に基づく分類方法では、縦断裂、水平断裂、横断裂、弁状断裂、複雑断裂に分けられていて、それぞれ特徴があります。
縦断裂では半月板の円周に沿って生じる損傷であり、損傷が長く転移したものをバケツ柄断裂と呼びます。
水平断裂は半月板を上下に分断するように、脛骨プラトーに並行な損傷です。
横断裂は半月板の内縁から脛骨プラトーに垂直に生じる断裂形態のことを指します。
弁状断裂は縦断裂損傷が伸びた垂直弁状断裂と、水平断裂の損傷が伸びた水平弁状断裂があります。
この弁状断裂は半月板の逸脱を招き、変形性膝関節症のリスクを増大させる可能性があると言われています。
3.半月板損傷の診断
半月板損傷の診断のゴールドスタンダードは関節鏡と言われています。
臨床的にはMRIと臨床所見を基にして診断することが一般的ですが、分かりにくい断裂形態もあるため、関節鏡による診断の方がより詳細に分かります。
しかし関節鏡は一般的ではないため、先ほど説明をしたようにMRIが基本的に行われるのです。
MRIでは3段階のグレードで分類されていて、信号変化が内部に留まるグレード1、2は半月板の変性を信号変化が表層達しているグレード3は半月板の損傷を示唆しています。
しかしMRIで半月板損傷の疑いがあったとしても、必ずしも症状と一致する訳ではないのです。
特に高齢者では76%にグレード3の損傷があったと報告されており、症状の原因に関しては画像所見のみならず、臨床的な評価と併せて考えていく必要があります。
MRIよりも短時間に評価できる方法として超音波検査があります。
高い感度、特異度が報告されているため、診断に有用ではあるものの中心部の状態を把握することはできません。
そのため、半月板損傷の全体像を把握するためには、MRIが1番適した検査であると考えられます。
臨床検査としては関節裂隙の圧痛と整形外科テストを行います。
整形外科テストは、McMurray test、Apley test、Thesaly test、Ege testなどが有用です。
それぞれクリックや疼痛が発生すれば陽性となります。



4.半月板損傷の治療
半月板損傷が無血行領域に生じた損傷は、自然経過では治癒しません。
それは血液供給が無いと組織の修復のために必要な炎症反応が生じないからです。
しかし血行がある領域、特に辺縁部では治癒能力があるため半月板の修復が行われます。
組織修復の過程についても説明をします。
外傷後2週
損傷部の空間をフィブリン血栓が満たす。
このフィブリンの足場を通じて血管が増殖し間葉細胞の集積を伴う。
外傷後4~6週
血管と細胞の集積が続き、6週で線維血管性瘢痕によって完全に空間が満たされる。
さらに滑膜組織が集積し、 血管が連結する。
4週以上の患肢固定は. 半月板の血流低下、瘢痕形成の減少、コラーゲン割合の減少、コラーゲン配列の乱れ、半月板の変性を招くためこの時期では固定よりも運動が組織治癒の促進に好ましいといえる。
外傷後8週
線維血管性瘢痕と滑膜組織の血管反応が弱まり始める。
瘢痕組織内に通常の円周性方向に走るコラーゲン組織が確認できる。
外傷後10週
線維血管性瘢痕はリモデリングされ、通常の輪郭が形成される。 滑膜組織は減少するが、線維性瘢痕組織内に血管が残存する。
半月板損傷では保存療法を中心に行います。
保存療法に抵抗する場合やキャッチングやロッキングの症状を有する場合は手術を行います。
半月板は基本的に温存するため縫合術が選択されます。
手術方法としてはall-inside法、inside-out法、outside-in法があります。
各縫合の方法は半月板損傷の部位によって選択されます。
5.リハビリの流れ
リハビリでは半月板の治癒と膝関節周辺の機能を改善させることが重要です。
半月板は関節軟骨への負荷を増大させないためにも近年ではなるべく温存させることが主流となっています。
膝関節の動きによって半月板も連動して動くため、損傷部位や損傷形態によって関節運動の制限や荷重の制限も行う必要があります。
特に長い縦断裂や横断裂は荷重により断裂部に伸長ストレスがかかると言われているため、免荷を考慮した方が良いと考えられています。
損傷部位が前節の場合は完全伸展時のストレスに注意し、中後節の場合は深屈曲時のストレスに注意をする必要があります。
これは膝関節運動に伴って半月板が一緒に動くからです。
膝関節伸展時には前方に、屈曲時には後方に移動し、回旋時には大腿骨に併せて半月板が動きます。
特に外側半月板は膝深屈曲時に変形をしながら亜脱臼するくらい大きく動くため、半月板の大きな可動性が必要なものの、関節を動かすことで半月板に大きなストレスがかかると推測されるため、内側・外側どちらの損傷かも非常に重要なポイントです。
おおよそ2週程度経過したら徐々に膝関節の回旋アライメントの改善や半月板由来の疼痛に留意しながら可動域訓練やトレーニングを進めていきます。
半月板損傷により関節内が腫れると、特に内側広筋の機能が低下しやすくなるため、内側広筋のトレーニングが重要です。
また半月板の動きをコントロールするためには、膝蓋下脂肪体の柔軟性、膝窩筋や半膜様筋の機能も大切で、同部位の機能改善も図っていきます。
CKCの動作改善も必要で、カッティング動作において。体幹が同側側屈や回旋、ワイドスタンスでの動作になると、膝の外反モーメント及び内旋モーメントを増大させる可能性があります。
これを改善させるためには体幹機能や股関節機能も必要です。
中殿筋のトレーニングや体幹を安定させた状態で四肢を動かすようなことをすることで、CKC動作におけるアライメントの改善を促していきます。

参考文献
- 軟部組織損傷・障害の病態とリハビリテーション
- Predicting meniscal tear stability across knee-joint flexion using finite-element analysis