腰椎圧迫骨折について

腰椎圧迫骨折は椎体骨折の1つで、椎体の骨が圧潰している状態を指します。

この骨折の背景には骨粗鬆症という骨密度が減少し、骨強度が弱くなるという状態が基盤にあることが多く、それに対する対策も必要不可欠です。

骨の状態の判断はX線でできますが、損傷時期を把握するためにはMRIが必要になります。

圧迫骨折は時期によってリハビリの内容を変化させて対応する必要があるため、詳細な骨の状態把握が大切です。

  • 圧迫骨折は椎体が圧潰した状態を指す
  • 骨折の背景には骨粗鬆症が関連していることが多い
  • 好発部位は胸腰椎移行部
  • 診断にはX線やMRIを用いる
  • 骨折時期の把握にはMRIを行う必要がある
  • 骨粗鬆症がある場合はそれに対する治療も必要不可欠
  • リハビリは骨折の時期や状態をみて徐々に進めていく

目次

  1. 腰椎圧迫骨折とは
  2. 腰椎圧迫骨折と関連が深い骨粗鬆症
  3. 腰椎圧迫骨折の診断
  4. 腰椎圧迫骨折の治療
  5. リハビリの流れ

1.腰椎圧迫骨折とは

そもそも圧迫骨折とは、骨が長軸方向に潰れるように骨折を起こすことからそのように呼ばれます。その圧迫骨折が腰椎に起こったものを腰椎圧迫骨折と言います。

もっと広い枠組みでみると、腰椎圧迫骨折とは椎体骨折の1つで外傷による脊椎の損傷のことです。
脊椎椎体が長軸方向に潰れるように骨折(圧潰)を起こすことから、圧迫骨折と呼ばれています。

圧迫骨折のほとんどは高齢者に起こり、最も頻度が高いのは骨粗鬆症性骨折と言われています。
アメリカでは毎年70万人以上が罹患しているといわれ、50歳以上の白人女性の10人に4人は生涯に一度は股関節または脊椎の骨折を経験するそうです。

日本では70歳代前半の25%、80歳以上の43%に圧迫骨折がみられるとされ、70歳以上ではその半数以上が複数の圧迫骨折を有すると言われています。
好発部位は胸腰椎移行部が最も多く、第7胸椎を中心とした中位胸椎が次いで多いです。

胸腰椎移行部に多い理由として

  • 脊椎の前弯、後弯が変化する部分で椎体前方にかかる負荷が大きい
  • 第11、12胸椎では肋骨が胸骨と関節していないため安定性が低い

ということが挙げられます。

脊柱圧迫骨折の症状として

  • 体動時の痛み
  • 骨折椎体レベルの圧痛
  • 叩打痛

などが現れるため、それらを確認していく必要があります。

圧迫骨折には椎体の形状によって大きく3つに分類されています。
椎体のどの部分がどの程度潰れているかがポイントです。

この分類分けを行う際にはX線を用いた定量的評価法Quantitative Measurement:QM法というものを用います。

2.腰椎圧迫骨折と関連が深い骨粗鬆症

腰椎圧迫骨折は骨粗鬆症に関連して起こることが多いと言われています。

骨粗鬆症とは、骨強度の低下を特徴とし、骨折のリスクが増大する骨疾患のことを指します。

原発性骨粗鬆症診断基準
脆弱性骨折あり 1.椎体骨折または大腿骨近位部骨折あり
2.その他の脆弱性骨折があり、骨密度がYAM値80%未満
脆弱性骨折なし 骨密度がYAM値の70%以下または-2.5SD以下
  • 脆弱性骨折:立った姿勢からの転倒またはそれ以下の軽微な外力によって発生した非外傷性骨折

骨密度の検査は基本的に腰椎、大腿骨近位部で測定されます。
そこでYAM値(若年成人平均値)との比較を行うのですが、腰椎は20~44歳、大腿骨近位部では20~29歳のデータが対象となります。

測定にはDual-energy X-ray Absorptiometry(DXAまたはDEXA)法が推奨されており、当院でも測定することが可能です。
DEXA法は2種類の異なるX線を照射して、骨とそれ以外の組織におけるX線吸収率の差から骨密度を測定する方法になります。

骨粗鬆症と診断された場合、治療として薬剤を使用します。
薬剤としては骨形成を促進するものと骨吸収を抑制するものとを状態によって使い分けます。

3.腰椎圧迫骨折の診断

圧迫骨折の診断には単純X線とMRIが中心に行われます。
X線では以下の2つの方法を用いた分類方法が用いられます。

①定量的評価法Quantitative Measurement:QM法
②半定量的評価法Semiquantitative:SQ法

①QM法

QM法は、C/A、C/Pのいずれかが0.8未満、またはA/Pが0.75未満の場合を椎体骨折と診断します。

椎体の高さが全体的に減少する場合、扁平椎には判定椎体の上位または下位の A、C、Pよりおのおのが20%以上減少している場合を椎体骨折となります。

②SQ法

SQ法は正常の形態(グレード0)を基準にして、軽度変形(グレード1)、中等度の変形(グレード2)、高度変形(グレード3)の4段階で分類をします。

グレード1以上に当てはまると椎体骨折とされます。

SQ法椎体高椎体面積
グレード0正常椎体
グレード120~25%低下10~20%減少
グレード225~40%低下20~40%減少
グレード340%以上低下40%以上減少

また早期診断にはMRIが有効とされています。
圧迫骨折では骨折発症2週間以内においてX線よりも診断精度が高く、新規骨折か既存骨折の判断に有用です。

X線では分からない骨折のことを不顕性骨折と言います。
MRIではX線と違い椎体内の血腫や浮腫を捉えることができるため、X線では圧潰や骨折線の不明瞭な骨折も診断ができます。

●新規骨折

ある時点の観察では正常であった椎体が、次の時点の観察で新たに骨折と判定されたもの。または、ある時点と比較し次の時点において椎体変形の度合いが増強したもの。

●既存骨折

通常、初回X線像撮影時にすでに発生していた骨折。

圧迫骨折は新規骨折か既存骨折かによって対応が変わってくるため、骨の状態を正確に診断することが重要なのです。

4.腰椎圧迫骨折の治療

圧迫骨折の治療は保存療法と手術療法があります。

圧潰率が50%以下であれば椎体の後方関節による椎体安定性の代償ができるが、それ以上の場合は観血的固定術が適応となります。
また神経障害がある場合も手術の適応となることがあると言われています。

受傷早期の場合、コルセットによる固定を行うことが多く、硬性、軟性コルセット、体幹ギプスが使用されています。
装具装着後12週間時点では、硬性装具の方が軟性装具よりも脊椎変形に対する予防効果が高かったが、48週間時点では有意差がありませんでした。また硬性、軟性、装具なしの脊椎後弯予防効果の差が確認できなかったという報告もあり、現時点では装具の効果は不明瞭です。

しかし、硬性装具は体幹の動きを制限する効果が認められており、椎体にかかるストレスを軽減させることが可能であると考えられます。
また圧迫骨折発症後2週間はベット上の臥床安静を保つことにより、椎体圧潰と脊柱後弯変形の進行を予防する効果があったとされています。

しかし、臥床を保つことによる筋力の低下や骨密度の低下、認知機能の低下なども起こることを考えると慎重に選択をしなければなりません。
各施設、医師によって治療方針が異なるため、しっかりと相談をして決定することが重要です。

手術療法は大きく2種類が施行されます。

  • 経皮的椎体形成術(Balloon Kyphoplasty:BKP)
  • 固定術

5.リハビリの流れ

圧迫骨折に対するリハビリでは、骨折部位に不要な外力やストレスを与えないことと二次的な機能低下を防ぐことが大変重要です。

特に以下には注意が必要で、これらは骨折部にストレスを与えるため時期をみて慎重に進めていきます。

  • 体幹を屈曲する動作
  • 腹圧を高める動作

日常生活動作においては体幹屈曲動作を行う場面が多々あるため、それらを回避する必要があります。

例えば

  • 椅子に座っている時の姿勢
  • 椅子から立ち上がる時の姿勢
  • 靴を履く時の姿勢
  • シャワーを浴びる時の姿勢

などが特に体幹が屈曲しやすいため、それぞれ伸展位を保った状態で動作をすることが大切です。

リハビリ初期では、拘縮予防および深部静脈血栓を予防するためにも、下腿三頭筋のストレッチや足関節の底屈・背屈運動を行います。

疼痛が落ち着き、骨癒合がある程度得られてきたらHip liftバードドッグなどを行い、体幹の伸展筋を鍛えていきます。

体幹の伸展筋は脊柱の後弯と逆相関するため、徐々に強度を高めていきます。

腰椎の圧迫骨折は時期に合わせたリハビリと骨粗鬆症に対する治療を並行して進めていくことが大切になるのです。

参考文献

  • 脊椎保存療法のリハビリテーション
  • 椎体骨折評価基準
  • Managements of osteoporotic vertebral compression fractures:A narrative review

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クリニック名
西国立整形外科クリニック
診療内容
(診療科目)
一般整形外科、リハビリテーション、スポーツ整形外科、骨粗しょう症、漢方内科
住所
〒190-0021 
東京都立川市羽衣町2-49-7
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