~ アーチが潰れている!足の内側が痛い!それは後脛骨筋機能不全かも!? ~
後脛骨筋腱機能不全症は、腱の変性が起こり、腱鞘炎から縦断裂、完全断裂へと進行し、後脛骨筋の機能が低下する病態のことを指します。
この状態になると足の内側アーチが潰れ、足部内側痛などの様々な症状を引き起こします。
また病態が進行すると外反型の変形性足関節症にまで至ります。
病態の進行状況や症状によっては手術療法を行う場合がありますが、保存療法でトレーニングなどを行うことも重要です。
ここがポイント!後脛骨筋機能不全のまとめ
- 後脛骨筋機能不全症は進行性の病態である
- 扁平足を伴う疾患であり、最終的には変形性足関節症に至る
- stageの軽いものであれば保存療法が有効で、インソールなどの装具療法や運動療法を中心に進める
- 進行した場合は手術療法が適応となり、いくつかの方法を組み合わせて行うことがある
目次
- 後脛骨筋機能不全とは
- 後脛骨筋機能不全の診断
- 後脛骨筋機能不全の治療
- リハビリの流れ
1.後脛骨筋機能不全とは
後脛骨筋腱機能不全症(posterior tibial tendon dysfunction;PTTD)は、腱の変性が起こり、腱鞘炎から縦断裂、完全断裂へと進行し、後脛骨筋の機能が低下する病態です。
その結果徐々に扁平足が進行し、最終的には変形性足関節症を生じると言われています。
後脛骨筋は脛骨、腓骨、骨間膜後面を起始として深部後方コンパートメントの最も深いところに位置する筋肉です。
下腿遠位1/3で腱に移行し、足関節内果後方を下方へ向けて走行します。

内果下端において急激に前方に方向を変え、腱が足底に対して平行に走行するような形になります。
その内果後方部では相対的に血流が乏しく、線維軟骨組織が多いと言われています。
後脛骨筋は下腿後面で脛骨、腓骨、骨間膜に起始しており、舟状骨結節と楔状骨、第2〜4中足骨に付着しています。足部内側縦アーチの保持に非常に重要な組織で、収縮することで内側縦アーチを持ち上げるような力を発揮します。
後脛骨筋機能不全症は肥満の中年女性に多いと言われていて
- 炎症性疾患
- 外傷
- 糖尿病
- 高血圧
- 関節弛緩
- ステロイドの使用
などがリスク因子として挙げられています。
根本的には軽微なメカニカルストレスが繰り返しかかることで腱の変性が起こると言われています。
特に前述したように後脛骨筋腱は内果後方で急激に走行を変化させるため、同部位にストレスがかかりやすく、血流も乏しいため組織修復も起こりにくいことが原因と考えられています。
内果周囲から足部内側の疼痛が主訴となりますが、変形が進行すると外側部で骨性のインピンジメントが発生し、疼痛が内側から外側に移り変わるということも起こります。
2.後脛骨筋機能不全の診断
後脛骨筋機能不全症の診断は、現病歴、局所所見、足部立位X線像、MRIに基づいて行われます。
局所の所見としては内果周囲の腫脹と後脛骨筋腱の圧痛、Too many toes sign、Single heel raise testを確認することが重要です。

単純X線においては足部の変形程度が確認できます。
Lateral talometatarsal angle(Meary角)は、足関節を側面から見た写真で距骨と第一中足骨角を見ます。
本来であれば距骨と第一中足骨の軸はほぼ一直線になります。
軽度: 4~15度未満、中等度:15~30度未満、重度:30度以上という形で分類分けすることができ、扁平足の程度を評価することができます。
MRIでは後脛骨筋の損傷程度が診断でき、損傷分類はContiによって報告されています。
| Conti分類 | |
|---|---|
| Type1 | 腱の肥大と実質内の高信号や縦断裂を認める部分損傷 |
| Type2 | 腱の狭小化と幅広い断裂と変性 |
| Type3 | 足腱の完全断裂 |
また、MRIによる後脛骨筋機能不全症の診断の感度が95%、特異度が100%と言われていて、非常に精度の高い検査方法です。
後脛骨筋機能不全症の病気分類は、Johnson分類が用いられています。
| Johnson分類 | |
|---|---|
| Stage1 | 後脛骨筋腱に沿った圧痛と腫脹を認め変形はごく軽度 扁平足変形なし |
| Stage2 | 徒手矯正が可能な外反扁平足 Flexible flatfoot |
| Stage3 | 徒手矯正が不能な扁平足 Rigid flatfoot |
| Stage4 | 外反型の変形性足関節症が生じたもの |
3.後脛骨筋機能不全の治療
治療においては保存療法ならびに手術療法があります。
保存療法においては装具の装着や内服治療や注射、運動療法などを中心に行っていきます。
特にJohnson分類のstage1の病期の早い段階であれば装具療法が効果的で、特に足底挿板(インソール)がオススメです。
疼痛が著しく炎症が強い場合にはギプスによる固定を行う場合もあります。
Stage2以降では手術療法が適応となり、前足部および後足部の変形の程度によっていくつかの術式を組み合わせます。
踵骨内側移動骨切り術は、踵骨隆起を骨切りして内側に移動させることで、アキレス腱を内側に移動します。
これによって下腿三頭筋の牽引力を外反から内反方向に移行することができ内側縦アーチの回復を促すという術式です。
踵骨内側移動骨切り術は、長趾屈筋腱移行術と併用されることが多い術式です。
長趾屈筋腱をできるだけ遠位で切離した後、舟状骨に作製した骨孔に固定し、アーチをサポートする筋として作用させます。
その他には踵立方関節延長術などの術式が報告されています。
4.リハビリの流れ
リハビリでは
- 後脛骨筋にかかるストレスを減少させる
- 後脛骨筋の筋力強化
の2点を患部の状態を見ながら行っていきます。
距腿関節において背屈制限があると、代償的に足部の内側縦アーチが潰れるように中足部から前足部が動きます。
そうならないようにするためにはまず背屈の可動域を改善することが重要です。
背屈可動域は非荷重の状態で改善したとしても荷重位においては制限を認める場合があると報告されています。
そのため、荷重位での背屈可動域の評価も非常に大切です。
背屈可動域の制限には下腿三頭筋と長母趾屈筋の影響が強いと考えられています。
長母趾屈筋は距骨の真後ろを通り母趾末節骨まで向かっていくため、距骨が後方に移動するのを直接的に阻害します。
長母趾屈筋の評価は長母趾屈筋テスト(FHLテスト)で行います。
これは最大背屈位を保持した状態で母趾を伸展しどのくらい可動するかを評価するテストです。
20度未満の場合はタイトネスがあると判断し、長母趾屈筋に対する徒手的な介入や運動療法を行っていきます。
後脛骨筋のトレーニングは非荷重位から徐々に荷重位へと進めていきます。
非荷重位では足関節を回外(底屈、内転、内返し)方向に動かし、それに対して負荷をかけていきます。
荷重位では踵を上げるCalf raiseを中心に進め、両足のCalf raiseから片脚に移行し徐々に負荷を増大させます。
Calf raiseを行うときに足部を約30度内転位にすることで、後脛骨筋の筋活動が高まることが分かっています。
そのため、トレーニングを行う際は内転位のpositionで行っていきます。

また足部内在筋のトレーニングは内側縦アーチの改善があったことが報告されています。
特にショートフットエクササイズという、足底を床につけた状態でMP関節を屈曲するトレーニングが非常に有効です。
いきなりはなかなか難しいですが、練習を重ねていくことで徐々にできるようになっていきます。
足部、足関節以外にも股関節の機能が重要で、中殿筋機能が低下すると片脚姿勢時に骨盤が反体側に傾いてしまうトレンデレンブルグ兆候が起こります。
トレンデレンブルグ兆候が起こると足関節内側にかかる負荷が大きくなり、後脛骨筋にかかるストレスも増大してしまいます。
股関節のトレーニングも行うことで、結果的に足関節への負担を減らすことができるため、疼痛の緩和などに役立つ場合があるのです。
参考文献
- 後脛骨筋腱損傷・障害の診断と治療-後脛骨筋腱機能不全症(PTTD)を中心に-
- 後脛骨筋腱の障害-後脛骨筋腱機能不全と外脛骨障害を中心に