腰椎椎間板ヘルニアについて

国民生活調査でも有訴率第1位にもなる腰痛。
そんな腰痛の原因の1つである腰椎椎間板ヘルニアは聞き馴染みのある疾患だと思います。

しかし聞き馴染みがあるが故になんでもかんでもヘルニアが原因だと言われたり、ヘルニアで括られたりもしてしまいがちです。

今回はそんな腰椎椎間板ヘルニアについての正しい知識をお伝えしていきたいと思います。

  • 腰椎高位にて症状が異なる
  • 診断には画像所見と臨床症状が一致することが重要
  • 椎間板ヘルニアは脊柱管内ヘルニアと外側ヘルニアに分けられる
  • ヘルニアの脱出程度により4型に分類される
  • 生活の中では椎間板の後方にかかるストレスを軽減させることが重要

目次

  1. 腰椎椎間板ヘルニアとは
  2. 腰椎椎間板ヘルニアの症状
  3. 腰椎椎間板ヘルニアの診断
  4. 腰椎椎間板ヘルニアの治療
  5. リハビリの流れ

1.腰椎椎間板ヘルニアとは

腰椎椎間板ヘルニアとは、椎間板ヘルニアの変性髄核が線維輪を穿破し、椎間板組織が脊柱管内に脱出あるいは突出して神経を直接圧迫することにより腰痛や神経症状が出現したもの、と定義されています。

まず腰椎という骨は5つ存在して、その骨の間に存在しているものが椎間板です。
さらに椎間板は線維輪と髄核に分かれていて、この部分が破綻して神経に影響するのが腰椎椎間板ヘルニアです。

医療機関で診断を受けた腰椎椎間板ヘルニアの有病率は1.5~2%であったと言われています。
またアメリカの報告では人口の約1%、年間280万人が罹患しているとも言われています。

そう考えると腰椎椎間板ヘルニアはかなり身近な疾患であるということが分かります。

男性患者が女性患者に比べると2〜3倍多く、20歳~50歳で発症し、発症の平均年齢は40歳代です。
椎間板ヘルニアの多くは加齢に伴う椎間板の変性が原因であり、後方の線維輪の破綻が起こります。

好発部位は第4腰椎と第5腰椎の間で最も多く、ついで第5腰椎と第1仙椎で多いといわれていて、これら2つの部位で腰椎椎間板ヘルニア全体の90%程度となるとされています。

発生メカニズムとしては、腰椎を屈曲することで線維輪の前方が圧縮されて、髄核に対して後方に移動する力が生まれた結果、髄核が線維輪に対して剪断ストレスを与え、線維輪が破綻もしくは後方に膨隆ないしは突出するということが推察されています。

腰椎椎間板ヘルニアの2つの種類

脱出の程度による分類

膨隆・突出型…髄核が線維輪を押すことで椎間板が膨らんだ状態。線維輪には亀裂などがなく連続性が保たれている。

② 後縦靱帯下脱出型…線維輪に亀裂が入り、髄核が後方へ移動しているが後縦靱帯下に収まっている状態。

③ 経後縦靱帯脱出型…髄核が線維輪の鉤部線維と後縦靱帯を穿破し、脊柱管内に脱出した状態。

④ 遊離脱出型…髄核が線維輪と後縦靱帯を穿破しているだけではなく、椎間板から分離して脊柱管内に遊離した状態。

ヘルニアの自然退縮は、経後縦靱帯脱出型と遊離脱出型の方が起こりやすいとされています。

マクロファージという免疫細胞が反応して、この退縮の過程をたどります。

ヘルニアの局在による分類

① 脊柱管内ヘルニア…後正中型、後外側型

② 外側ヘルニア…椎間孔内外側型、椎間孔外外側型

後外側型が70~80と最も多いと言われていて、後正中型は腰痛が主体となり、後外側型は神経根を圧迫することから下肢痛が主体となると言われています。

外側ヘルニアは比較的まれであるものの、症状が強く出現することが多いです。

2.腰椎椎間板ヘルニアの症状

腰椎椎間板ヘルニアの主な症状は、ヘルニアが生じた高位によってさまざまな症状が現れます。
腰痛や臀部痛、下肢の痛みや痺れが出現したり、筋力低下、重症なものでは膀胱直腸障害(頻尿、残尿感、尿失禁など)が出現したりします。

第3腰椎と第4腰椎のヘルニアによる神経症状を例として考えます。脊柱管内ヘルニアの場合は第4腰椎神経が、外側ヘルニアの場合は第3腰椎神経が障害されます。
これは神経が通過している場所と、髄核が飛び出す場所の関係によって神経が圧迫される場所が決まるからです。

神経というのはある程度の幅があるものの、支配する筋肉や感覚の領域というものが決まっています。
その結果、冒頭に述べたようにヘルニアの高位によって症状が異なってくるのです。

ヘルニアにおいて緊急に手術を要するのは、重篤な下肢の運動障害と馬尾神経障害がある場合です。
馬尾神経が障害された場合、膀胱直腸障害が起こります。

排尿障害を有するヘルニア患者に対して手術を行った報告では、尿閉発症から時間が経過して手術を行なった場合、予後が不良になる傾向が明らかになりました。

つまり、ヘルニアによる運動障害の他に、膀胱直腸障害がみられた場合は早期の手術が今後の日常生活に影響する可能性があるのです。

3.腰椎椎間板ヘルニアの診断

腰椎椎間板ヘルニアの診断のためには4つの病歴と画像診断、各種テストが有用です。
下腿に対する放散痛、神経根デルマトームに一致する疼痛、咳・くしゃみによる疼痛の悪化、発作性疼痛』の4つがあった場合、診断制度がかなり高くなります。

画像所見も診断のためには重要です。
単純X線は腰椎椎間板ヘルニアの直接の診断にはあまり有用ではありませんが、他の疾患との鑑別に役立ちます。

MRIとCTの診断精度は同程度と言われており、いずれかを行うことは腰椎椎間板ヘルニアの診断に有用です。

身体所見として報告されているものは、SLRテスト、FNSテスト、筋力低下、感覚障害、深部腱反射の低下・消失、放散性疼痛があります。

4.腰椎椎間板ヘルニアの治療

腰椎椎間板ヘルニアは自然経過によってヘルニアが吸収される疾患で、おおよそ3ヵ月間が目安になります。
そのため基本的には保存療法が適応です。

保存療法としてガイドラインに記載があるものは、薬物療法、硬膜外ブロック注射、理学療法、手術の4つとなります。

内服に関してはガイドライン上では弱く推奨するということに留まっています。
痛み止めを服用したから痛みがすごく軽減したかというと、そういう訳ではないものの、多くの人が痛みを抱えており処方を希望する人が多いというのが事実です。
全く効果がない訳ではないので、内服をすることによって疼痛が軽減する場合は内服にて痛みをコントロールすることも重要だと言えます。

ブロック注射は注射を施行後、3~12ヵ月程度、疼痛を軽減させる効果が認められています。
内服と同様に質の高い研究はないものの、疼痛が強い場合には1つの手段として充分価値がある治療法だと言えます。

理学療法においてはリハビリの流れの項目で説明をしていきたいと思います。

最後に、手術においてはガイドライン上には大きく4種類記載されています。

1. 椎間板摘出[術] (discectomy)

ヘルニア摘出以上の侵襲が椎間板に加わったもの、つまりヘルニアに加えて一部椎間板も摘出する術式。

2. ヘルニア摘出 [術] (herniotomy)

ヘルニアとなっている変性髄核のみを摘出する術式をヘルニア摘出術。

3. 髄核摘出 [術] (nucleotomy)

4. 固定術

この4種類のうち髄核摘出と固定術はガイドライン上でもあまり推奨されていないため、あまり一般的ではないと考えられます。

5.リハビリの流れ

最初にガイドライン上で示されている理学療法についてお話をしたいと思います。

ガイドライン上では牽引療法およびコルセットに関しては、効果が認められていないと報告されています。
つまり、腰痛といえば牽引とコルセットというイメージの人も多くいると思いますが、今の医学においては有効性が示されていないということです。

一方、運動療法を行った場合には、質が高くはないものの腰痛の軽減と可動域の改善効果が認められています。
体幹トレーニングを行った際の研究でこのようなことが証明されているため、リハビリでも同様に体幹トレーニングを中心に進めていきます。

ただそれと同時に腰椎椎間板ヘルニアのリハビリでは、椎間板にかかるストレスを減らすことが大変重要です。
椎間板にかかるストレスは姿勢によって大きく変化し、椎間板内圧は前屈して荷物を持つことにより高まります。

さらに驚くべき事実としては、立位の状態を100とすると、座位の状態は約1.4倍もの圧力がかかっていることが報告されています。

当たり前ではありますが、体幹が前傾位となった状態で荷物を持つとさらに椎間板の内圧が増大します。
そのため、腰椎椎間板ヘルニアが発症した人に対しては、座位姿勢を指導したり前屈位にならないような指導をしたりすることが大変重要です。

具体的にはかがむ動作が必要な場面において体幹を直立位に保持すること、座っている状態においては姿勢が悪くならないように、なるべく直立を保つか背もたれを活用して良い姿勢を保持するように指導します。

実際のリハビリでは、冒頭に述べたような体幹トレーニングと、良姿勢を保つことを阻害する硬くなった筋肉のストレッチを重点的に行います。
特にハムストリングスや大殿筋の硬さがあると骨盤が後傾位となり姿勢が悪くなります。

さらに胸椎後弯姿勢が定着している場合も同様に猫背姿勢となり、椎間板内圧が高まりやすい姿勢となります。

では最後にそれらの筋肉のストレッチ及び筋力トレーニングの実際の方法を紹介します。

このようにストレッチやトレーニングを行いつつ、日常生活における腰椎椎間板へのストレスを軽減させることで徐々に痛みや痺れが落ち着いていきます。

もし軽減が見られないような場合は、腰椎椎間板ヘルニアの他に腰痛や下肢痛を起こす原因が隠れているかもしれません。
その際は再度検査を行うなど別な原因を探るようにしましょう。

参考文献

  • 脊椎保存療法のリハビリテーション
  • 腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン2021
WEB受付・予約
042-512-9320
クリニック名
西国立整形外科クリニック
診療内容
(診療科目)
一般整形外科、リハビリテーション、スポーツ整形外科、骨粗しょう症、漢方内科
住所
〒190-0021 
東京都立川市羽衣町2-49-7
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