~骨折の中でも意外と多い!手の骨折のまとめ
手の骨折は意外にも多く、橈骨遠位端骨折のみで全骨折の1/6(約15%)も占めると言われています。
高齢者の転倒や高エネルギー外傷による発症が多く、発症年齢が幅広いことが特徴です。
手の骨折の中でも舟状骨骨折に関しては、見逃されることが多く、骨癒合も起こりにくいため注意が必要です。
骨折の整復位が保持できない場合は、手術療法が適応となります。
ここがポイント!手の骨折のまとめ
- 手の骨折の発生は多く、橈骨遠位端骨折で全骨折の1/6程度になる
- 高齢者は転倒などで発生し、若年者では高エネルギー外傷で発生する
- 骨の整復位が保持できない場合は手術療法が適応となる
- 舟状骨骨折は見逃されやすく、骨癒合も得られにくいため注意が必要
目次
- 橈骨遠位端骨折について
- 舟状骨骨折について
- マレット指について
- 手指中節骨骨折について
- ベネット骨折について
- ボクサー骨折について
1.橈骨遠位端骨折について
橈骨遠位端骨折は世界でも最も一般的な骨折と言われています。

全骨折の1/6を占めるとも言われるほど頻度の高い骨折です。
日本以外の国で行われた世界的な研究では、一般人口における橈骨遠位端骨折の発生率は、男性で年間10万人あたり100~190人、女性で年間10万人あたり282~458人と報告されています。
好発年齢は男女共に二峰性分布を示し、最初のピークは10代、2番目のピークは70歳代以降で、50歳以上の人口では女性の方が男性よりも発症率が高いです。
2011年から2020年までに北海道の病院で調査された研究においては、258人が橈骨遠位端骨折を発症し、女性は190人(73.6%)で、男女比は1:2.8でした。
女性の平均年齢は73歳、男性は49.9歳で、橈骨遠位端骨折患者258人のうち、24人(9.3%)が15歳以下、175人(67.8%)が65歳以上であったと報告されています。
そのため若年者にも発症するものの、基本的には高齢者に多い疾患であると言えます。
人口10万人あたりで計算をすると、158.0~272.6件でした。 調査したすべての年において、年間発生率は一貫して女性の方が男性よりも高くなっており、(女性:人口10万人あたり222.0~429.2件、男性:人口10万人あたり74.0~184.6件)日本でも女性の方が男性よりも発症率が高いという結果になります。
受傷起点としては、高齢者の場合は転倒時に手をついて受傷するといった低エネルギー外傷が多く、成人においては交通事故やスノーボードでの転倒など、高エネルギー外傷が多いです。
骨折の種類は大きく大別すると骨折が関節の中に至っていない関節外骨折と、関節にまで到達している関節内骨折に分かれます。
関節外骨折には、遠位骨片が背側に転移するColles骨折と、掌側に転移するSmith骨折があります。
関節内骨折は遠位骨片が手根骨とともに背側へ転移する背側Barton骨折と、掌側へ転移する掌側Barton骨折、橈骨茎状突起が骨折するChauffeur(ショフール)骨折の3つです。
基本的には保存療法が選択されることが多いですが、整復位が保持できない場合や粉砕骨折に行われます。
2.舟状骨骨折について
舟状骨骨折は青壮年に多く見られる骨折で、手根骨の骨折の中で最も発生頻度が高く、80~90%を占めると報告されています。
多くは転倒時に手関節が橈背屈強制され受傷すると言われていますが、舟状骨骨折は見逃されることが多いです。
そのため、遷延治癒や偽関節になることもまれではありません。
舟状骨の栄養は橈骨動脈から伸びる掌側枝と背側枝によって行われていますが、掌側枝は20~30%、背側枝が70~80%と多く支配しています。
舟状骨の近位部においては、背側枝のみで支配されているため、舟状骨骨折においては近位部で壊死が起きる可能性が高いのです。
診断は単純X線で判別が付かない場合は、CTやMRIも重要であると言われています。
理学所見としては嗅ぎタバコ窩(anatomical snuff box)の圧痛と腫脹が挙げられます。

新鮮安定骨折例では保存療法が選択されることが多いものの、不安定骨折では手術療法が選択されます。
3.マレット指について
マレット指は、スポーツや転倒時の突き指にて受傷した時に生じるDIP屈曲変形のことを指します。
末節骨基部背側の裂離骨折によるものを骨性マレット、指伸筋の終末腱の断裂によるものを腱性マレットと言います。
骨性マレットの治療は、小骨片の裂離骨折の場合、DIP関節を伸展位にて固定する保存療法が選択されます。
関節面の1/3以上の骨折や脱臼を合併している場合、整復位を保持することが困難であり手術療法が適応となります。
腱性マレットの治療は、DIP関節伸展時に腱断端部が接する場合には保存療法を接しない場合には手術療法が選択されます。
屈曲変形が強い場合、近位断端部は退縮していることが多く、伸展しても断端部が接しません。
したがって保存療法では伸展不全を呈しやすいため、腱縫合術が選択されます。
4.手指中節骨骨折について
受傷機転は直達外力や軸圧が多く、診察では腫脹・圧痛・変形に加えて、回旋変形の有無を必ず確認します。
回旋変形は握りこぶしを作らせたときに指が重なったり、指先の向きがずれたりする状態です。
本来であれば、指を握った時に舟状骨に向かいますが、回旋変形がある場合は舟状骨からずれてしまいます。
画像は通常、正面・斜位・側面X線が基本で、関節内骨折や粉砕、PIP関節亜脱臼が疑わしいときはCTが有用です。
5.ベネット骨折について
ベネット骨折は、母指の手根中手関節(CM関節)の骨折亜脱臼で、掌側前縁の骨片が大きいのが特徴です。
男女比は10:1で圧倒的に男性に多く、若い年齢層で多いと言われており、約半数が30歳未満に発生します。
転倒して手をつく、ボクシングのパンチ、ボールの衝突などで起こると言われています。
母指CM関節は他のCM関節と完全に分離しているため、可動域が広い反面、最も不安定であると言われています。
6.ボクサー骨折について
ボクサー骨折とは、第5中手骨の中手骨頚部/骨頭下骨折のことを指し、硬い壁などを殴った時に生じるとされています。

手の骨折患者の33%は中手骨骨折であるとも報告されており、女性よりも男性に多く発生し、発生率は10~29歳の年齢層でピークを迎えると言われます。
ボクサー骨折が起きている場合、拳を握った際に中種骨頭(knuckle part)の突出が消失し、アーチが乱れることで外見上の変化がおきます。
単純X線で確定診断が行われますが、拳を握る評価である程度の判断ができるのです。
転移の程度が小さければ保存療法が適応となりますが、整復保持ができない場合は手術が適応となります。
参考文献
- Epidemiology of distal radius fracture: a regional population-based study in Japan
- 骨折の機能解剖学的運動療法 総論・上肢
- Management of Fifth Metacarpal Neck Fracture (Boxer’s Fracture): A Literature Review
- 整形外科運動療法ナビゲーション上肢・体幹