~歩いていると下肢が痛い!痺れる!それは脊柱管狭窄症かも?~
腰部脊柱管狭窄症はなんらかの要因によって脊柱管が狭窄し、下肢に痛みや痺れを引き起こす疾患です。
脊柱管狭窄症は歩いていたり立っていたりすると下肢に痛みや痺れを引き起こす疾患です。
身体を前屈位にして休息すると回復するのが特徴になります。
構造的な因子にはアプローチできませんが、非構造的因子に対してアプローチをすることで症状の軽減を図るために理学療法を進めていきます。
しかし保存療法による効果が乏しい場合や膀胱直腸障害など神経症状が重度である場合には手術療法が選択されます。
ここがポイント!腰部脊柱管狭窄症のまとめ
- 腰部脊柱管狭窄症は脊柱管が狭窄し、下肢に痛みや痺れを引き起こす疾患
- 歩行や立位において症状が出現しやすい
- 前屈位で休息を取ると症状が改善し、再び動作が行えるようになる
- 狭窄の程度は主にMRIで診断を行う
- 保存療法では内服、運動、ブロックなどを行い、保存療法による効果が乏しい場合は手術療法を行う
目次
- 腰部脊柱管狭窄症とは
- 腰部脊柱管狭窄症の症状
- 腰部脊柱管狭窄症の診断
- 腰部脊柱管狭窄症の治療
- リハビリの流れ
1.腰部脊柱管狭窄症とは
脊柱管狭窄症とは、脊柱管の狭小化により神経が圧迫され、各種症状が出現する疾患のことを指します。
その中でも腰椎の神経を圧迫して神経が障害されたものを腰部脊柱管狭窄症といいます。

頚椎の狭窄症と比較して約4倍の発生率を示しており、平均すると10万人あたり5人の割合だと言われています。
しかし年齢が上がるにつれその割合は高くなります。
70歳以上になると、症状の有無に関わらず患者の最大80%に何らかの程度の狭窄が認められると言われています。
無症状の60歳以上被験者においては、約20%の人にMRIで狭窄が認められています。
日本の診療ガイドラインにおいても腰部脊柱管狭窄症の定義について統一された見解はないとのことなので、疾患ではなく症候群として捉えることが良いとされています。
狭窄によって馬尾神経が圧迫されるものを馬尾型、神経根が圧迫されるものを神経根型、2つが合わさったものを混合型として分類するのが一般的です。
また狭窄部位による分類分けもあり、中心性、外側性、椎間孔狭窄、脊柱管内狭窄ということもあります。
神経は基本的に脳から脊柱管内へ走行し、その後脊柱管外に出て末梢へと向かっていきます。
脊柱管内を走行する神経は脊髄と呼び中枢神経に分類され、L1~L2高位レベルで末梢神経である馬尾神経へ移行します。
つまりL2レベル以下で発症した脊柱管狭窄症の場合、出現する症状のほとんどは末梢神経症状です。
腰部脊柱管狭窄症の最も起こりやすいとされているのがL4–5レベル、次いでL3–4、L5–S1、L1–2の順になります。
脊柱管狭窄症の原因として椎間板の変性が挙げられています。
椎間板の変性により椎間板高が減少し、黄色靭帯の折り畳みを引き起こし、その後、硬膜嚢に後方からの圧迫を加えます。
病気の進行に伴い、関節包と黄靭帯の肥厚、骨棘や嚢胞の形成がさらに脊柱管狭窄を進行させてしまうのです。
脊柱管狭窄症のもう一つの重要な要因は、後縦靭帯骨化症(OPLL)で、アジア人において頻度が高いと言われています。
2.腰部脊柱管狭窄症の症状
腰部脊柱管狭窄症においては、腰下肢の痛みや痺れが主症状とされています。
多くの人は立位や歩行、腰部の伸展により症状が増強し、代表的な症候として間欠性跛行があります。
間欠性跛行とは、歩いていると下肢に痛み・痺れ・重だるさといった症状が出現し、徐々に歩行困難となるが、椅子に座る・しゃがみ込む・身体を屈めてしばらく休むと症状が消失し、再び歩けるようになるというものです。
この間欠性跛行の原因として、循環障害説というものが提唱されています。
間欠性跛行には神経周囲の循環障害が関係している、とするもので、一定時間正座をしていると徐々に足が痺れてくるのも同じ原理だと言われています。
神経周囲の循環障害の原因は、骨変性や靭帯の肥厚などによる構造的因子と、硬膜外圧の上昇、腰椎ポンプ作用の低下という非構造的因子の2つです。
①硬膜外圧の上昇
硬膜外圧とは脊柱管内の圧力を指し、腰椎の屈曲によって上昇する椎間板内圧に反して、腰椎の伸展によって高まると言われています。
腰椎伸展によって脊柱管面積が狭小化した結果、硬膜外圧が高まり、神経周囲のうっ滞を引き起こした結果、下肢に痺れの症状を引き起こすのです。

②腰椎ポンプ作用の低下
人体の静脈環流は基本的に筋肉の収縮や呼吸によるポンプ作用で行われています。
ふくらはぎ(下腿三頭筋)が第2の心臓と言われていることを考えるとイメージがしやすいと思います。
腰椎でも同様にポンプ作用が働いており、腰椎の屈伸の可動域が低下することで、ポンプ作用が低下し循環動態が悪化すると考えられます。
構造的な因子は変えることができないため、リハビリにおいては非構造的な要因に対してアプローチを行い、間欠性跛行の軽減を狙っていくのです。
3.腰部脊柱管狭窄症の診断
腰部脊柱管狭窄症の診断は主にMRIが用いられています。
単純X線画像では脊柱管狭窄症を評価することはできませんが、5mm以上の前方すべりがあれば腰部脊柱管狭窄症の可能性が高くなるためMRIの撮像が望ましいという報告があります。
腰部脊柱管狭窄の診断においてMRIの有用性を述べた論文は多いとされています。
実際MRIのほうがCTよりも狭窄を過大評価されにくく、検者間の一致率が高いため、狭窄の程度を評価するには MRI がより推奨されているのです。
一方、腰椎疾患1,586例の対象者のうち、手術施行722例において、MRI上の脊柱管狭窄と, 脊椎すべりは手術適応を予測する独立した予測因子であったとも言われています。
脊柱管前後径は手術を要した患者の横断面脊柱管前後径の限界値は、L4<14mm、L5<14mm、S1<12mmであったとされているため、MRIにてその部分を評価することも重要です。
しかし、MRI上の脊柱管狭窄の重症度と、術前あるいは術後1年の腰痛ならびに下肢痛の程度、歩行距離などとは関連がなかったという報告もあり、診断のために非常に有用ではあるものの、症状についてはしっかりと精査をする必要があるということを示しています。
症状のところで述べた間欠性跛行は診断においても非常に重要な要素になりますが、血管性跛行との鑑別が大切になります。
間欠性跛行の鑑別診断を以下にまとめます。
| 間欠性跛行の鑑別診断 | ||
|---|---|---|
| 鑑別項目 | 血管性 | 神経性 |
| 跛行距離 | 一定 | 変化する |
| 症状の軽快・消失 | 立位の休息でも回復 | 座位、前屈で回復 |
| 消失・軽快までの時間 | 早い | ゆっくり |
| 坂道を登る | 症状出現 | 出現しにくい |
| 坂道を下る | 症状軽快 | 症状出現 |
| 自転車 | 症状出現 | 症状なし |
| 疼痛の種類 | こわばる、痙攣状 | 末梢への放散痛、痺れ |
| 下肢動脈の触知 | なし | あり |
| 下腿・足部の皮膚 | 萎縮 | 正常 |
| 筋力低下・筋萎縮 | なし | 時にあり |
脊柱管狭窄症診療ガイドラインにおいては診断に重要と考える病歴は
① 歩行時の殿部痛と下肢痛があるか
② 前屈で症状が楽になるか
③ ショッピングカートや自転車を使用すると症状が楽になるか
④ 歩行時に運動や感覚障害が生じるか
⑤ 足部動脈拍動が正常で左右差がないか
⑥ 下肢筋力低下があるか
⑦ 腰痛はあるか
の7つと報告されています。
また、腰痛または腰痛と下肢痛を有する患者1,448 例を対象とした観察研究で
① 症状が両側性
② 腰痛より下肢痛が強い
③ 歩行や立位時に痛み
④ 座ると楽になる
⑤ 年齢が48歳以上
が含まれれば腰部脊柱管狭窄症の可能性が高く(感度0.96)、逆に腰部脊柱管狭窄症でない確率は非常に低い(尤度比LR0.19)と報告されています。
つまり画像所見だけではなく、このような所見を確認することが腰部脊柱管狭窄症の鑑別には非常に重要であるということです。
4.腰部脊柱管狭窄症の治療
治療は保存療法と手術療法に分かれます。
保存療法の中では薬物療法や運動療法、ブロック療法の有効性が高いと言われています。
薬物療法は、リマプロストやNSAIDs (非ステロイド性抗炎症薬)が比較的エビデンスレベルも高く、推奨されています。
リマプロストは血小板の凝集を抑え、血流の改善を図ることによって、下肢の痛みや痺れを軽減させることが目的です。
NSAIDsは、神経根型に対してリマプロストと比較して有効性が高いと報告されています。
またNSAIDs+リマプロスト群は、リマプロスト単独群と比較して、腰痛および下肢痛を有意に改善します。
しかし保存療法による効果が乏しい場合や膀胱直腸障害など神経症状が重度である場合には手術療法が選択されます。
手術は除圧術と固定術に分かれています。
除圧術は骨や黄色靭帯、椎間板などを切除することで脊柱管を拡大させて神経の圧迫を解除する方法です。
固定術はボルトなどを用いて脊椎を固定する手術で、除圧により脊椎の不安定性が出現する場合やすべり症や側弯などの矯正を行う方法です。
近年では内視鏡の進歩により低侵襲で手術ができるようになっていると言われています。
5.リハビリの流れ
リハビリでは、非構造的な要因に対してアプローチをしていきます。
特に重要となるのが
- 腰椎の屈曲可動域
- 股関節伸展可動域
- 腹筋群の遠心性機能
の3つになります。
腰椎の屈曲可動域
腰椎屈曲可動域はPLFテストで評価をします。
PLFテストは側臥位で上側の股関節屈曲を行い、抵抗感なく大腿部が腹部につくか見るものです。
もし大腿部が腹部につかなければ腰椎屈曲制限があると評価をします。
股関節伸展可動域が制限されてしまった場合、歩行時など股関節伸展可動域が求められる局面で、代償的に腰椎の前弯を増強させる因子となります。
その結果、硬膜外圧を高め下肢の痛みや神経症状の出現に繋がるのです。
股関節伸展可動域
股関節伸展可動域はThomas testで評価をします。
Thomas testでは背臥位で一側の下肢を抱えるようにした際に、反対側の膝窩がベットから浮くか、を見るものです。
もし膝窩がベットから浮いてしまう場合は股関節伸展制限があると評価をします。
腹筋群の遠心性機能
腹筋群の遠心性機能は、腰椎の前弯が増強するような動作が求められた際に、それを制御する役割があります。
そのため、可動域のみならず腹筋群の筋機能は非常に重要となるのです。


参考文献
- 腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2021
- Spinal stenosis
- 脊椎保存療法のリハビリテーション