腸脛靱帯炎について

腸脛靱帯炎はランナーに多く発症する膝外側の痛みです。

ランニングなどの比較的軽微なストレスが繰り返しかかることで発症するため、ダイナミックアライメントを評価し、改善をしていくことが大切になります。

疼痛が発生している膝関節のみならず、足関節、股関節、体幹の機能に着目することが重要です。

基本的には保存療法が中心で、手術を行うことはあまりありませんが、慢性化している場合にはまれに手術を行うことがあります。

  • ランナーに多い慢性疾患
  • 腸脛靱帯深層の脂肪組織、膝関節の外側に存在するlateral synovial recessの圧迫、オーバーユースによる腱障害
  • ダイナミックアライメントの改善が非常に重要
  • 基本的には保存療法を中心に行う
  • 保存療法に抵抗する場合はまれに手術療法を行うことがある

目次

  1. 腸脛靱帯炎とは
  2. 腸脛靱帯炎の診断
  3. 腸脛靱帯炎の治療
  4. リハビリの流れ

1.腸脛靱帯炎とは

腸脛靱帯炎とは主にランナーに発生する膝外側の使いすぎ(オーバーユース)による損傷で、1970年代より一般的に知られるようになったと言われています。
そのため一般的にはランナー膝と呼ばれています。

発生率は活動的な人の2~25%で、運動していない人には報告されていないそうです。
つまり日常生活を送る程度の負荷であれば、腸脛靱帯炎は発生せずスポーツをする人に起こる疾患であると言えます。

実際にオーバーユースで起こる膝の疾患の中で2番目に多いとも報告されています。
腸脛靱帯炎はランナー、自転車競技者に最も多く、ついでノルディックスキーヤーやサッカー選手などに多いです。

このような腸脛靱帯炎が、膝関節屈曲30度以上で腸脛靱帯が大腿骨外側上顆の前方に、30度未満で後方に位置するため、それによる摩擦ストレスで炎症が起こることが発生要因であると考えられていました。

しかしながら最近の研究で腸脛靱帯は大腿骨外側顆上に固定されており、前後に移動しない、摩擦による炎症も起こらないということが言われています。

そのため現在では腸脛靱帯深層の脂肪組織が原因だという報告や膝関節の外側に存在するlateral synovial recessの圧迫、オーバーユースによる腱障害だと考えられています。

腸脛靱帯は大腿筋膜の肥厚部で大腿外側に位置していて、膝関節外側のスタビライザーの一つとして機能しています。
遠位部で様々な箇所に付着部を持っているため、股関節の外転、伸展、外旋に寄与し、片脚立位時の安定性にも寄与しているのです。

リスクファクターには内的因子と外的因子があります。

内的因子としては、kinetic因子やkinematic因子、解剖学的因子があり、外的因子として、環境因子、社会的因子などが存在しています。

解剖学的な因子としては、大腿骨外穎の突出、内反膝、脚長差があげられています。

kineticとkinematic因子としては、回内足による下腿の内旋傾向が原因で腸脛靱帯への負荷増大、股関節外転筋力低下、大腿四頭筋の緊張増大などが挙げられており、患部以外の状態も重要です。

また片脚立位やランニングにて、股関節内転、膝関節内旋がリスクとなるため、動作の観察も非常に重要なポイントになります。

外的因子としては、環境要因として固いサーフェスや傾斜のある接地面がリスクとなるということが報告されています。

靴のクッションも重要であり、片減りしているような靴底では、走行時のバランスが悪化し、前述のようなランニングフォームになってしまうことも考えられるため、靴の確認も忘れずに行う必要があります。

社会的因子として、トレーニング量に関連して競技大会の口程や、指導者と選手との関係性が問題となることがあると言われています。
例えば、重要な大会が近い場合、選手は多少無理をしてでも練習量を増やしたり、強度を上げたりすることが多々あり、それが結果として腸脛靱帯炎につながってしまうのです。

2.腸脛靱帯炎の診断

診断では自覚症状と理学所見、画像所見を基に行います。

腸脛靱帯炎の自覚的な症状は

  • 膝関節外側上顆に限局した疼痛
  • 長時間の運動による疼痛
  • ランニングの着地動作や自転車のダウンペダル時の疼痛などが挙げられます。

などが挙げられます。

理学所見として

  • 大腿骨外側上顆に限局した圧痛
  • 整形外科テスト

を行っていきます。

整形外科テストでは『Noble compression test』、『Modified Noble compression test』が使用されます。

通常のNoble compression testでは、ハムストリングスの伸長性が低下している場合に検査の精度が低下する可能性があると言われています。
そのためModified Noble compression testでテストを行うことが推奨されています。

Modified Noble compression testは患者を患側が上の股関節軽度屈曲位の側臥位にします。
検者が腸脛靱帯後縁を圧迫し、他動的に膝関節を0~60度まで屈曲をさせます。
その際に疼痛が再現されれば陽性で、一般的には膝関節30度屈曲位で最も疼痛が顕著になります。

画像検査は、単純X線、超音波検査、MRIが行われます。

単純X線は腸脛靱帯炎の診断に有用ではありませんが、変形性膝関節症や関節内遊離体などの他の疾患との鑑別に有効です。

超音波検査では、腸脛靱帯の肥厚や腸脛靱帯の深層にある脂肪組織の血流増加、腸脛靱帯遠位部に片側性に液体が貯留している場合は、腸脛靱帯炎を疑います。

MRIは腸脛靱帯の肥厚と大腿骨外側上顆の間の信号変化を認めることがあります。

また外側半月板損傷を除外することもできるため、確定診断及び除外診断に有用な方法です。

3.腸脛靱帯炎の治療

急性期であればアイシングや内服による疼痛コントロールを中心に行います。

慢性期になっていて疼痛が強い場合は、局所のステロイド注射を行うことがあり、短期的な疼痛改善に有効です。
しかし、ステロイドによる靭帯の変性が起こる可能性があり、数は少ないものの注射を繰り返したことで腸脛靱帯が断裂したという報告もあるため注意が必要です。

近年ではPRP注射も着目されており、腸脛靱帯炎に関する研究は少ないものの他の疾患では有用性が高いことが報告されています。

その他に体外衝撃波も除痛効果や組織修復作用が認められているため、腸脛靱帯に対して使用することもあります。

腸脛靱帯炎に対する手術は国内ではあまり報告がなく、手術に至ることはあまりないと言われています。
しかし長期の保存療法に抵抗する場合、適応になります。
手術は炎症を起こしている部分を切離し、腸脛靱帯が骨を圧迫しないようにします。

4.リハビリの流れ

リハビリではダイナミックアライメントの改善を目的に行っていきます。

腸脛靱帯炎のリスクファクターとして、動作時の股関節内転増加、足関節回内過剰による下腿内旋増加などが問題となります。
つまりランニング動作における動的な膝外反を修正することが非常に重要であると言えます。

まず急性期においてはアイシングや内服で疼痛をコントロールすることが重要です。
急性期脱した後は運動療法を中心に進めていきます。

腸脛靱帯炎では大腿四頭筋の緊張増加、特に腸脛靱帯と密接に関係している外側広筋の緊張増加を改善することが大切です。

また疼痛のコントロール範囲内で腸脛靱帯を含めた大腿外側のストレッチを行うことも非常に効果的になります。

さらに足関節の背屈可動域制限は代償的な回内動作を助長し、ランニング時に腸脛靱帯へのストレスを増加させます。
そのため、足関節背屈可動域を評価し、制限因子に対して徒手的なアプローチやストレッチを行い、背屈可動域の改善を図ります。

ランニング動作時の動的な膝外反とside bridgeの筋持久力の関連が報告されており、肘と両下肢で体幹を一直線に保持させ、2分以上姿勢を保持することが出来なければ体幹筋力が低下していると判断します。
体幹筋力が低下している場合は体幹トレーニングを行い、動的なアライメントの改善に努めます。

股関節内転過剰の改善に対しては、股関節外転、外旋筋のトレーニングを行うことが重要です。

このように腸脛靱帯炎においては、ダイナミックアライメントの改善がポイントになります。
ダイナミックアライメントが崩れる要因を評価し、それに合わせたトレーニングを重点的に行うことが大切です。

参考文献

  • 整形外科医のためのスポーツ診療のすべて
  • ランナー膝-腸脛靱帯炎-
WEB受付・予約
042-512-9320
クリニック名
西国立整形外科クリニック
診療内容
(診療科目)
一般整形外科、リハビリテーション、スポーツ整形外科、骨粗しょう症、漢方内科
住所
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東京都立川市羽衣町2-49-7
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