目次
- 変形性膝関節症とは
- 膝関節の構造
- 変形性膝関節症の分類
- 変形性膝関節症の診断
- 変形性膝関節症の治療の流れ
1.変形性膝関節症とは
40歳を過ぎて以下のような症状があれば変形性膝関節症を疑います。
- 階段の登りよりも下りが痛い
- あぐらをかくと痛い
- 膝の向きを変えると痛い
- 正座ができない
- 立ち上がりが痛い
- 膝が伸びづらい/曲がりづらい
- 膝の前や内側、裏が痛い
- 長く歩いていると痛くなる
- 膝が腫れぼったい
- 走り出し・動き出しが痛い
変形性膝関節症とは、加齢や筋力低下や体重増加により関節内にある軟骨が徐々にすり減り、膝に痛みが生じていく病気です。クッションの役割を果たす軟骨がすり減るため骨にかかるストレスが大きくなり骨の変形やトゲのような突起物(骨棘)ができたりします。また、炎症が生じると関節液が増加し、いわゆる「膝に水がたまっている」状態がおきます。
この変形性膝関節症は高齢者に多く、日本における患者数は65歳以上では55%と高いため、国民病であると言われています。
変形性膝関節症を自覚症状がある患者数は1000万人、自覚症状がない(レントゲン画像上の変化のみ)人数も合わせると3000万人の患者がいるといわれます。また患者の性別は、女性のほうが男性よりも1.5〜2倍多く認めます。
2.膝関節の構造
大腿骨、脛骨、膝蓋骨の3つの骨で構成されています。大腿骨と脛骨の間には、関節を衝撃から守る関節軟骨と半月板があります。また前後左右にかけて複数の靭帯や筋肉が連動して膝関節機能を維持しています。
膝関節は荷重関節であり、膝が伸びて体重を支えることで安定します。しかし、靭帯が機能していない、筋肉が伸びない状態になると膝関節の不安定が生じ膝に負担が起こりやすくなります。
3.変形性膝関節症の分類
変形性膝関節症の診断の一つにレントゲン検査があります。レントゲン検査を使った代表的な分類に、関節軟骨の幅や骨棘の有無などから重症度(グレード)を判定するKellgren-Laurence分類(以下KL分類)があります。
グレードは関節の隙間の大小によって1から4まで分類されており、グレード2以降に該当するとおよそ変形性膝関節症と診断されます。
grade0 | 正常 |
grade1 | 骨棘もしくは骨硬化像が見られることがある |
grade2 | 裂隙の狭小化(25%以下)、骨棘形成ややあり |
grade3 | 裂隙の狭小化(50~75%以下)、骨棘形成と骨硬化あり |
grade4 | 裂隙の狭小化(75%以下)、関節裂隙はほぼ消失 大きな骨棘形成と骨硬化あり |
変形性膝関節症は時間をかけて進行し、徐々に症状が重くなっていきます。
症状の初期は起床後や運動時に膝のこわばりを感じますが、動かしていくと痛みを感じなくなる方もいらっしゃいます。
しかし、中期になると痛みが寛解せず、正座や立ち上がり、しゃがみこみ、階段の下りで痛みが強くなります。また膝周囲に炎症が生じるため、膝が熱くなったり、腫れたりします。
末期になると外観からも変形が明らかとなり、膝の曲げ伸ばしや歩行に制限が出ます。また生活範囲も狭くなるので精神的な負担も強いられる事になっていきます。
4.変形性膝関節症の診断
問診
痛みについてはいつから?どの部位が?どんな時に痛みが出るのか?を聞いていきます。またサポーターや杖など使用しているか?痛み止めは飲んでいるか?他院での治療経験があるか?体重の増減や普段の運動量、生活状況、仕事内容、運動歴、膝の手術歴などを聴取し原因を探っていきます。
視診
診察室へ入室時から始まります。自力歩行が可能な場合は、歩き方も観察し、立った状態や膝を動かしたときに痛みがでるのかを推測することが出来ます。また、膝の形や腫れの部位、程度も確認します。
触診
自覚症状の部位を実際に触れてみてどこに痛みがあるか、関節の動きはどの程度か、水が溜まっているか、自力で動かせるかなどを確認していきます。
レントゲン検査
関節内、外の状態も含めてXPでの関節裂隙の狭小化を確認します。
ただしレントゲンの重症度とご本人の痛みの程度は一致しないことがあります。
MRI
レントゲンではそれほど進行していなくても痛みの程度が強かったり、腫れが引かなかったりと慢性化している場合はMRIを撮影し関節の状態を確認することがあります。この場合、MRIでは半月板の逸脱やBML(骨髄浮腫・微小骨折)等が確認されることがあります。
5.変形性膝関節症の重症度と治療の流れ
Kellgren-Lawrence分類の診断と自覚症状が必ずしも一致するとは限りませんが、基本的な治療方法は運動療法を含むリハビリテーションとなります。リハビリテーションでは膝の可動域の改善、筋力強化、歩行の見直しを行うことで、症状の緩和と進行予防が期待できます。また手術となった場合でも、術前術後の運動療法を継続することが大事です。
現在の変形性膝関節症の手術は主に①人工膝関節全置換術(TKA)、②高位脛骨骨切り術が行われています。いずれも入院期間は2-3週間程度であり、術後の膝機能回復のために、術後早期からリハビリテーションが開始されます。リハビリテーションにより膝の筋力と可動域を維持することで、術後の回復を早める効果があります。
変形性膝関節症の運動療法
パテラモビライゼーション
お皿(膝蓋骨)周りには脂肪体という組織があります。そこには痛みを感じる受容器がたくさん付着しています。脂肪体が硬くなるとお膝の曲げ伸ばしがうまくできなくなりますので、膝を伸ばした状態でお皿を中心に両手で上下左右にゆっくり動かしましょう。
クアドセッティング
床やベッドの上に膝を伸ばした状態で座り、その状態から膝の裏にタオルなどを丸めて入れます。そこからタオルを押しつぶすように太ももの前側に力を入れ、膝を伸ばしていきます。
5秒間力を入れたら一旦休憩して、再度タオルを押しつぶしていきます。この動作を10回を目安に繰り返して下さい。
ヒールスライド
片側の足を伸ばして座ってもらいます。その状態からつま先の向きを真っ直ぐにして膝をゆっくり曲げていきます。膝が深く曲がるように自分の手で支えながら動かしていきます。痛みがある方は痛みが出る手前で大丈夫です。次に膝をゆっくりと伸ばしていきます。この動作を繰り返します。
ブリッジ
仰向けで寝てもらい両膝を立ててもらいます。両手をついてお尻の筋肉を使ってお尻をあげていきます。もし腰が痛くなるようであればお尻に力が入るところまでで大丈夫です。
サイドブリッジ
横向きの姿勢で肘を立てて身体を支えてもらいます。(肩や腕が痛い場合は両手を使ってください。)下の足は曲げても大丈夫です。お尻を床から離すようにあげていきます。
あくまで一部ですが、1セット10回目安に3セット行ってみてください。痛みが出た場合はすぐに運動を中止していただくようお願いします。
リハビリでは、患者様の状態に合わせてマンツーマンで丁寧な指導を心がけております。
膝に生じているこわばりや違和感、痛みは、もしかすると変形性膝関節症の初期症状かもしれません。思い当たる方は、一度医療機関の診察を受けてみてはいかがでしょうか。