~股関節が痛い!画像で変形している!それは変形性股関節症かも!?~
変形性股関節症は股関節の変形により、疼痛が出現し日常生活に支障をきたす疾患です。
日本においては二次性変形性股関節症が圧倒的に多く、その1番の原因は寛骨臼形成不全であると言われています。
寛骨臼形成不全があると、股関節に対するストレスが増大するため、変形性股関節症のリスクも増大することが分かっています。
そのためリハビリにおいて股関節の安定性を担保することが重要で、変形や日常生活への影響が強い場合は、手術療法を行います。
ここがポイント!変形性股関節症のまとめ
- 変形性股関節症は二次性が圧倒的に多い
- 二次性変形性股関節症の1番の原因は寛骨臼形成不全である
- 発症年齢は50~60歳代が多い
- 診断はX線による変形の程度で判断する
- リハビリは保存療法と手術療法がある
- 手術療法は関節温存術と人工股関節全置換術の2種類がある
目次
- 変形性股関節症とは
- 変形性股関節症に関連する寛骨臼形成不全
- 変形性股関節症の診断
- 変形性股関節症の治療
- リハビリの流れ
1.変形性股関節症とは
変形性股関節症の明確な定義は存在しませんが、基本的には形態異常や加齢により軟骨が変性・摩耗し、関節面の保護機能が失われた状態のことを指します。

日本における単純X線診断による変形性股関節症の有病率は1.0~15.7%と幅広く報告され、男性が0~18.2%、女性が2.0~14.3%であると言われています。
症候性の有病率は全体で0.75%、男性0.29%、女性0.99%とされています。
発症年齢は50~60歳代が多いが、高齢化が進んだことにより70歳代以降の発症も増えているのが現状です。
変形性股関節症は原因が明らかではない一次性変形性股関節症と、原因が明らかな二次性変形性股関節症があります。
欧米では一次性変形性股関節症が多いとされていますが、日本では二次性変形性股関節症が多いと言われています。
二次性変形性股関節症の原因は寛骨臼形成不全が最多(74~81%)であり、小児期股関節疾患(Perthes病、大腿骨頭すべり症)、外傷(脱臼、骨折)骨粗鬆症に伴う軟骨下脆弱性骨折、感染、代謝・内分泌疾患、腫瘍類似疾患が挙げられています。
2025年の報告においては変形性股関節症の原因は
- 寛骨臼形成不全74.4%
- FAI4.8%
- 軟骨下脆弱性骨折3.4%
- 一次性変形性股関節症13.4%
であったとされています。
そのため変形性股関節症の病態の理解のためには寛骨臼形成不全についても知る必要があるのです。
2.変形性股関節症に関連する寛骨臼形成不全
寛骨臼形成不全は股関節を構成し、大腿骨頭の受け皿にもなっている寛骨臼の形態異常のことを指します。
つまり、骨盤の臼蓋が健常な人に比べ発育が不完全で大腿骨頭を十分に覆うことが出来ない病態です。

寛骨臼による大腿骨頭の不十分な被覆により、関節への過度の接触圧が生じ、その結果として関節変性が加速すると言われており、変形性股関節症の主要因となっています。
荷重負荷は正常な股関節の2.8~4.0倍と言われており、立位、歩行中いずれにおいても関節の一部にストレスが集中します。
歩行においては踵接地をしたすぐ後が最も関節に対してストレスがかかっており、このストレスの強度も寛骨臼形成不全の場合は大きくなってしまうのです。
寛骨臼形成不全があると、X線上の変形性股関節症の発症リスクが4.3倍にもなると言われているため、二次性変形性股関節症の主要因である寛骨臼形成不全の理解は大切になります。
寛骨臼形成不全の評価は主に単純X線にて行われるのが一般的です。
- Center-edge(CE)角<20°
- Sharp角>45°
- Acetabular roof obliquity(ARO)>15°
- Acetabular head index(AHI)<75%
これらが見受けられる場合は寛骨臼形成不全と診断されます。
寛骨臼形成不全は生後数ヶ月以内に股関節の不安定性を引き起こすと言われており、特に乳児に多いと報告されています。
男児の1000人に5人、女児の1000人に13人に発生し、軽度のものでは生後最初の2ヶ月で自然に改善します。
股関節と寛骨臼の状態は乳幼児時期の成長により変化すると言われており
- 大腿骨頭の同心円状の縮小
- 寛骨臼軟骨と三放射軟骨軟骨の成長
この両者の適切なバランスが重要です。
3.変形性股関節症の診断
変形性股関節症に特徴的な身体所見は脚長差、筋萎縮、トレンデレンブルグ(Trendelenburg)兆候、跛行、鼠蹊部痛、スカルパ(Scarpa)三角の圧痛、可動域制限、パトリック(Patrick)テスト陽性などが挙げられています。
変形性股関節症のX線像での軽~中等症群、重症群ともに最も診断精度の高い可動域制限は内旋であったと報告されています。
可動域制限のカットオフ値は内旋、外旋は23°以下、屈曲94°以下であり、 内旋制限23°以下をカットオフ値とした場合、軽~中等症の股関節症診断の感度は86%、特異度は54%です。
重症の股関節症診断の感度は100%、特異度は42%であったと報告されており、可動域制限を評価することで変形性股関節症診断の補助となります。
変形性股関節症の診断は寛骨臼形成不全の診断と同様に、基本的には単純X線で行われます。
単純X線により、変形性股関節症の病気分類が決まり
- 前股関節症
- 初期
- 進行期
- 末期
という4段階に分類されています。
それぞれ関節裂隙の狭小化や消失、骨棘の形成、骨硬化像、骨囊胞形成、大腿骨頭の変形などを見て診断が下されます。
| 前期 | 初期 | 進行期 | 末期 | |
|---|---|---|---|---|
| 関節裂隙の狭小化 | ほとんどなし | 軽度・中等度 | 高度・部分的消失 | 広範な消失 |
| 骨構造の変化 | 骨梁配列の変化のみ | 臼蓋の骨硬化 | 臼蓋や骨頭の骨嚢胞 | 広範な骨硬化像、巨大な骨嚢胞 |
| 臼蓋および骨頭の変化 | 先天性、後天性の変化あり | 軽度の骨棘形成 | 骨棘形成、臼底の増殖性変化 | 著名な骨棘形成、臼蓋の二重像、破壊 |
4.変形性股関節症の治療
変形性股関節症の治療は大きく保存療法と手術療法に大別されます。
手術療法においては関節温存術と人工股関節全置換術の2種類があり、関節温存術は青・壮年期の前股関節症・初期変形性股関節症が対象となり、人工股関節全置換術は中年期の進行期・末期例が適応となります。
関節温存術には寛骨臼回転骨切り術(RAO)、Curved periacetabular osteotomy(CPO)、Spherical periacetabular osteotomy(SPO)などがあります。
RAOは骨盤臼蓋部を回転させることで大腿骨頭の被覆を改善し、関節荷重面を再構築する方法です。
側臥位にて骨盤後方からアプローチし、腸骨の外側から腸骨~坐骨~恥骨周囲をドーム状に切骨し、寛骨臼を外方に引き出すように回転させて固定します。
CPOは前方アプローチで弧状に骨切りする低侵襲志向の寛骨臼周囲骨切り術で、外転筋温存性が高く早期の筋機能回復が期待できると言われています。
SPOは前方アプローチかつquadrilateral surface(QLS)の温存を特徴とする手術です。
前方アプローチの利点は小皮切、移動骨片への血流維持、外転筋への低侵襲、短外旋筋群温存による関節安定性維持、腸骨内板外板の間での骨切りの正確なデザイン設定が可能なことです。
QLS温存の利点は、骨盤安定性維持、閉鎖動脈本幹損傷回避、広い骨癒合面、産道非侵襲が挙げられます。
一方で、外側大腿皮神経障害や脚短縮傾向が欠点となります。
以上のように手術により骨切りをする部位が異なるため、状況によって手術方法が異なるのです。
人工股関節全置換術は寛骨臼と大腿骨頭を人工の物に変える手術になります。

前方進入、側方進入、後方進入という、侵襲部位により手術の方法が分けられています。
前方侵入には、中殿筋より前方からの侵入、縫工筋と大腿筋膜張筋の筋間から入るdirect anterior approach(DAA)や大腿筋膜張筋と中殿筋の筋間から入るantelolateral approach(ALA)などがあります。
いずれにおいても、筋腱を温存することが可能であり、脱臼リスクの低減や術後疼痛が軽減、早期の筋力回復に有利とされる一方、術野が小さく手技の習熟が必要とされています。
側方侵入は、中殿筋を展開することにより視野が良好で,後方進入と比較し脱臼率は低く安定性に優れる反面、中殿筋の一部切離により跛行や筋力低下が生じることが報告されています。
側臥位で関節後方の外旋筋群を大転子より切離するアプローチで、視野が広く大腿骨操作も容易である反面、後方脱臼リスクが比較的高くなります。
5.リハビリの流れ
変形性股関節症において、運動療法は疼痛の改善、機能改善に有効であるとする質の高いエビデンスが複数あり、短期から中期的な効果が報告されています。
有酸素運動、筋力強化運動、水中運動が推奨されており、どの病期においても疼痛、機能障害の改善が期待されます。
特に筋力増強運動に関しては、股関節外転筋、膝伸展筋の筋力強化が推奨されています。
股関節外転筋は股関節を求心位に保つ働きを持っており、荷重した局面においては骨盤を並行に保ち、股関節にかかるストレスをコントロールするためにも重要です。
また腸腰筋や股関節深層外旋六筋も、股関節求心位を保つために非常に重要な筋肉であるため、機能改善は大切だと思われます。

疼痛が強い場合は、股関節に対するステロイド注射により短期的に疼痛緩和や機能改善が得られます。
しかし、長期的な効果は不明で、術後の感染リスクが増大すると言われているため、注射の治療においては慎重に進める必要があります。
人工股関節全置換術の術後リハビリは前方侵入の場合は、伸展、外転、外旋が脱臼肢位となり、後方侵入の場合は、屈曲、内転、内旋が脱臼肢位となるため、それぞれ注意が必要です。
参考文献
- 変形性股関節症診療ガイドライン2016
- 理学療法ジャーナル2026.02
- Developmental Dysplasia of the Hip (DDH): Etiology, Diagnosis, and Management
- 寛骨臼形成不全股の骨形態評価